2019年4月15日月曜日

目的と手段

 週末、卒業生のESを添削しながらテレビをつけていると林修氏と東京の校長の対談がありました。「宿題の廃止」「定期テストの廃止」など現在の中学校教育を真正面から否定しているのかと思いきや真逆でした。

 「宿題の廃止」これは理解を深めるための宿題以外の廃止、という意味です。正に大手進学塾の宿題が全否定されたわけです。元大手塾出身で各種マニュアルを作成していた立場として大量の宿題の意味を解説します。端的に言うと「講師の未熟さを大量の宿題でごまかし」ているのです。
説明が下手な先生(大半)→成績下がる→クレームor退塾
これを避けるために大量の質の低い宿題を出すのです。そしてトップクラス以外から宿題に対する不満がでたときに「宿題をしていないから成績が上がらない」と塾の講師の質の低さをごまかすのです。マニュアルを作成していた私が言うのだから間違いありません。ちなみにテレビ番組のいう宿題の廃止とは「宿題を厳選して必要なものだけ出す」という意味です。これはワンセと同じです。1教科当たり平均15分から20分程度の宿題を出しています。後述しますがペナルティは宿題ではありません。ただの罰です。

 「定期テストの廃止」これは広い単元のテストを廃止する代わりに1単元終了ごとに確認テストを実施するということです。また、希望により再テストも受験できるとのこと。これまたワンセと同じ。確認テストを小マメに実施することによりみんなの理解・定着を図っているのです。「大切だから覚えておいてね」で勉強してくれる子などほとんどいません。テストがあるから勉強するのです。

 というのがテレビを観た感想。これを踏まえてタイトルの「目的」と「手段」について。ワンセは小テストが多いです。今年度よりワンセタイムという名称はなくなりましたが、テストの自由度を上げるためです。毎回30分でするのではなく前週の内容によって自由にテストの時間を設けるのです。おそらく、テストに費やす時間は変わりません。ただ、質は非常に上がります。時間を決めてテストをすると、時間を過ごすためだけのものを用意することもあります。枠を自由に用いることによって、より有効活用できます。

 テストの不合格者には「補習」「プリント演習」「ペナルティ」が課されます。理解が不足していれば解説のために補習、公式は暗記しているが問題演習が不足していると感じればプリント演習、暗記の努力を怠って来ればペナルティです。ペナルティとはその名の通り罰です。とんでもない量を課されることによって、そんなに書くぐらいなら始めから勉強しておけばよかったと気づいてもらうのがペナルティを課す本来の目的です。テスト不勉強だったからペナルティをして来い、とは違うのです。あくまでテストに向けて勉強させるのが目的です。これが悪循環に陥るとペナルティや宿題忘れを居残ってやるのが免罪符になる手段になっていくのです。例年、そんな子が1割程度出ます。すると、ワンセはペナが多い、宿題が多いと言われます。実際、内部で宿題に関する調査をして「多い」「やや多い」「普通」「やや少ない」「少ない」で聞くと「普通」「やや少ない」が98%になります。つまり、宿題や課題をしてこない子を追いかけてやらせることによって、彼らが「宿題多い」「また怒られた」というのです。

 土曜日に補習で注意された子がいます。帰宅直前になぜ叱るのかについて諭しました。どうでも良い子には何も言いませんし、補習にも呼びません。叱るよりも見逃すほうが私にとってストレスになりません。叱ると、その夜や翌日まで自分の言い回しが正しかったのか葛藤し、答えが出ず悶々としています。言わないほうが間違いなく楽です。叱ることでストレス解消などできません。「龍神先生」は演じているもので、素の私は平和主義で、口論になるぐらいなら何も言わない、我慢する主義です。先生1年目は感情から叱るのではなく「叱らなくてはいけない」→「アドレナリンを出そう」→「叱る」この流れでしたから、声は大きくてもとても冷静でした。今でも楽しく授業できる中学受験のクラスはとてもまったりしています。勉強する意識がある子たちしかいないクラスは、単純に教えることに専念できるからです。わからなければ授業前後に聞きに来る姿勢はとても素晴らしく中3にも習わせたいです。爪の垢を煎じて飲め、というところですね。

 叱ることすら勉強させる手段の一つのなっているのが悲しいです。たとえ受験直前でも気が緩むとミスを連発し、実力通りの点数を取れません。受験生だから信頼して勉強管理を任せると、」どこかで緩む時期がきます。それを一喝するだけでクラス平均が10点上がるのです。自主性に任せて全員が前向きな気持ちで勉強するのが理想ですが非現実的です。

 でも、保護者の大半は引っ張っていってほしいと思っているのでしょう。少し横道にそれても導いてくれることを期待しているでしょう。懇談会などで子どもに対する思いを聞くと、絶対に裏切ってはいけないという気持ちになります。自分が嫌われ役になって叱るという手段を用いて勉強してくれるなら、成績をあげるという目的が達成できるので構いません。

長文になったのでこの辺りで筆を置きます。